ユルリ島の植物
ユルリ島には、キヨシソウやトキソウなど、約24種の絶滅危惧種をはじめ、300種の植物が生育している。そのため、1976年に北海道自然環境保全地域に指定される。とくにキヨシソウは、北海道では根室にしか生息しない貴重な植物である。また、ユルリ島の中心部にある高層湿原は、2001年に環境省によって「日本の重要湿地500」に選定されている。島ではキヨシソウやトキソウの他、エゾイソツツジ、クロユリ、シロハナスミレ、チシマフウロ、ツルコケモモ、ハクサンチドリ、ヒオウギアヤメ、ヒメシャクナゲ、マイズルソウ、ワタスゲなどの貴重な植物も確認されている。
花園効果
馬などの放牧によって、餌として好んで採食されるイネ科やカヤツリグサ科の植物の草丈が低くおさえられ、本来ならそれらの陰になってしまい、あまり勢力を維持することのできないフウロソウ科、キク科、ゴマノハグサ科、キキョウ科、アヤメ科、ラン科などの植物が適度に生い茂り、開花時にはそれらの花が目立つようになる。その光景がまるで花畑のように見えることから、放牧によって得られる植生への効果を、専門用語で「花園効果」とよぶ。ユルリ島では、草丈の高くなるイネ科の植物が馬の餌として常時採食されるため、島の植物は比較的低い状態で維持されている。そのため、本来なら日が遮られ、あまり勢力を維持することのできないエゾフロウ、ノコギリソウ、シオガマギク、ツリガネニンジン、ハクサンチドリなどの下層部の植物が生い茂っている。それらの植物は馬もほとんど菜食しないため、開花時には鮮やかな花々が島を彩る。また、ユルリ島から北東約700メートル先にはモユルリ島(“モ”は、小さいの意味)があるが、モユルリ島には草丈の高くなるイネ科の植物を菜食する動物がいないため、島全体がアイヌミヤコザサやイワノガリヤスなどで鬱蒼と覆われている。北海道では植生の回復と維持のため、北方原生花園(根室市)や原生花園あやめヶ原(浜中町)などで、馬やポニーの放牧がおこなわれている。また、知床が世界自然遺産に登録された際には、「知床への道」風景再生事業として、原生花園を彩る植物の減退がみられていた小清水原生花園(小清水町)や濤沸湖周辺で植生と風景の回復事業がおこなわれ、濤沸湖に隣接する北浜地区(網走市)では、植生回復事業として馬の放牧が実施された。小清水原生花園生態系管理マニュアル(2008年度版)には、「かつておこなわれていた家畜の放牧、蒸気機関車の火の粉による野火、牛馬の菜食や踏圧などの草原に対する攪乱の要因が、美しい草原を維持するために深く関わっていた」「攪乱の要因が排除されたことで景観が変貌してしまった。一見するところ原生花園を痛めつけているように見えるこれらの要因が、原生花園の維持に不可欠だった」と明記されている。
北方原生花園
小清水原生花園 濤沸湖北浜地区 |
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